iPad2以降、タブレット端末に全く興味のなかった僕が、9.7インチのiPadProを思わず買ってしまった。そして3週間使ってみて、衝動に身を任せたことを全く後悔していない自分がそこにいた。
最初はiPhoneSEを買おうと思っていた
Appleの3月の発表会でiPadProの9.7インチとiPhoneSEが発表された。かねてより4インチサイズの小ぶりな形状を好み、iPhone5Sを愛用し続けていた僕にとって、SEの発表は待ち望んでいたものだった。予約開始日には職場のトイレで予約したほどだ。ちなみに、その時は小さいサイズのiPadProの登場については、「ふーん、そうなんだ」程度のもので、全く興味がなかった。
風向きが変わるのは4月のとある花見の席だった。実は、相当な熱を持って迎えたSEの登場だったが、よく考えてみると5Sに全く不満がないので、壊れるまでは買い替えなくてもいいか、と予約をキャンセルし、すっかりAppleの新製品が出ていることも忘れて桜の季節になっていたのだ。そんな時、ひょんなことから小さいiPadProの存在が急に大きくなった。
花見の席に同席した友人が、前日に購入した件の新製品を持ってきていたのである。そこで実物に触らせてもらい、そのポテンシャルの高さに驚いた。このデバイスなら、MacBook Airの代替になり得る。いや、それどころか唯一電子化できずにいた大量の楽譜までも断捨離できる。そう思った瞬間に購入の意思は固まり、翌日には僕の手の中にiPadProがあった。
使ってみた感想
購入から3週間ほど使ってみた感想としては、「本当になんでもできてしまう。場合によってはMacBook以上にできてしまう。」という感じである。
ここのところ、ガジェット系のウェブメディアなどでは軒並み「便利で高性能だがノートパソコンに替わるものではない」という評価が目立つ。確かにビジネス用途でバリバリ使うのにはまだアプリが乏しいという面があるのかもしれないが、プライベートに使う分にはかなり使い勝手がいい。特に前述の楽譜への書き込みをはじめとして、ブログ更新も快適にできるので、個人的には充分MacBookに取って代わっている。
これらの利便性を実現しているのが「Split View」と「Apple Pencil」だ。前者は広いiPadの画面を活かし、それを2分割することで、2つのアプリを同時に使うことができる。この機能のおかげでブログ執筆がとても楽に行える。片方は手書きメモアプリを開き、ブログのプロット確認用に使う。もう片方はブログ執筆用の「Work Flowy」を立ち上げバリバリ書き込んでいく。そしてたまに正確な情報を知りたい時には、メモアプリの部分をブラウザに切り替えて、そちらを参照しながら筆を進めることもできてしまう。
後者のApple Pencilについては、詳しくは後述するが、とにかくストレスフリーで手書き文字をデジタルに再現できるのが良い。上記のSplit Viewで片方に手書きメモアプリを立ち上げていたが、個人的に、ブログの記事に取り組む時には、アイデア出しやプロット構成は手書きで詰めていくスタイルなので、アイデア出しから執筆まで一台で完結し、互いに参照しながら行き来できるこのデバイスならではの強みは、僕にとって計り知れないメリットなのである。
また、ブログには写真や動画も大事だが、それについても、この一台で事足りてしまうから恐ろしい。写真は下手なデジカメよりも高画質で撮れ、動画も4Kでの撮影はもとより編集まで完結できてしまう。勿論専門的な作業においては、心もとないマシンパワーなのだろうが、個人にとっては十分すぎるぐらいの性能だ。
今まで小さくて持ち運びに便利だからとMacBook Airの11インチを使ってきたが、ことここに至って、更に小さくて便利なiPadPro9.7インチを知ってしまった後では、11インチすら持ち運ぶのが億劫に感じてしまう。
純正のキーボードあるいはカバーについて
iPadProの購入にあたって、純正のキーボードやカバーの購入も検討した。結論としてはどちらも買わなかったのだが、その最大の理由が、重くてかさばるということだ。
確かに、smartkeyboardは電源不要で、普段はカバーとして使えるものの、正直それ自体が重く、いつもキーボードを使う作業をするわけではないので、野暮ったい。また、smartcoverにも共通するが、iPadを立てる角度と方向が横に限定されてしまうのも個人的にマイナスポイントだった。楽譜などを読む場合、縦置きにできないのは不便なのだ。
以上のことから、以前このブログでも紹介した、独立して使え、コンパクトに収納できるスタンドと、ロジクールのソーラーパネル付きキーボードを使うことにした。実はこの構成になる前に、縦置きにも対応した革のケースを購入し、2週間ほど使っていたのだが、それだとiPadProの薄さと軽さが殺されてしまうので、結局iPadProを裸で使うこの構成に落ち着いた。
過去記事→MacBook Airも立てかけられるコンパクトなiPad用スタンドの紹介!
過去記事→ソーラー充電で電池交換不要なワイヤレスキーボード、k760がオススメ!
ApplePencilについて
さて、ここら辺でApple Pencilについての使用感についても書きたいと思う。この世にiPhoneが鮮烈なデビューを果たしたAppleのプレゼンで、ジョブズがスタイラスをこき下ろしたというのは有名なエピソードだが、このApple Pencilはその時否定されたスタイラスとは似て非なるものだ。
なぜなら当時否定されたスタイラスが単なるポインティングデバイスだったのに対し、Apple Pencilはほとんど筆記具のレベルにまで昇華されているからだ。ほぼタイムラグのない反応、自分の筆跡そのままの文字がリアルタイムで画面に反映されていく様は感動すら覚える。僕はこの筆記性能の高さに驚き、購入欲が掻き立てられたのである。
手に持った時の重量感については賛否両論あるかもしれないが、個人的には、この重量感は持ち心地の良さを覚えこそすれ、不快感は全く感じない。普段から重めの金属製の多機能ボールペンなどを使ったりしているのもあるかもしれない。
また、このペンはどうやら転がらないように重心が中心から少しずらされている。なのでちょっと触れたぐらいでは転がっていかない。ただ、少し強めに揺れると、逆に反動でコロンコロンと転がっていってしまうので、慣れるまでは注意が必要だろう。
書き心地に関しては、ガラスのディスプレイに書くので、コツコツと音がし、初めは違和感を覚える。アンチグレアのフィルムを貼ると、画質は多少犠牲になるものの、ガラス感が軽減され、書き味がより手書きに近づくので、感触を重視する人にはオススメだ。
ちなみに、このApple Pencilは傾きや圧力を検知するセンサーがペン先についており、それらの筆記情報をBluetoothで本体に送信している。初めのペアリングは、本体のLightning端子にペンを指すだけという、とてもシンプルな方法だ。これで充電することもできる。
一見とても不安定な接続方法だが、海外のユーザーが検証した動画を見てみると、かなりタフに作られていることがわかるので、安心できる。
ケースを使うか否か
ジョブズが生前、iPodやiPhoneにケースをつけることを否定していた、というのは有名な話だが、実際問題新たなデバイスを購入した時に、多くの人はケースの購入も検討するだろう。例に漏れず僕も検討した。
特にiPadProを裸で持ってみた最初の印象が、長時間片手で保持し続けるのはちょっと辛いなあという印象だったので、楽に持てて、かつ縦置きにも横置きにも使えるスタンド機能のついたケースを品揃え抜群のアキバヨドバシに行って探した。そこで見つけたのが以下のケースだ。大好きな革製であることや、Apple Pencilが収納できるのもあって、即決でこのケースに決定した。
購入してから2週間ほどは、この縦横自在に立てかけられ、角度も3パターン使い分けられるケースを快適に使っていたのだが、何度もカバンから出し入れしているうちに、その構造上避けられない厚みや重さに大して不満を抱くようになってきてしまったのである。かつ、実際長時間片手で使用するという使い方をしないことにも気づき、前述の通り、本体は基本ケースをつけずに使用し、キーボードスタイルの時だけ縦置きにも横置きにも対応する元々持っていたスタンドを使う構成に落ち着いた。
とはいえ、最初に購入したケースはiPadProの使用スタイルによってはかなり便利なケースなので、僕のように最低限のサイズのカバンを使うために、普段から持ち歩くものを厳選している人でない限りは、オススメのケースだ。
ちなみにキーボードは本格的なサイズで十分なキーピッチがありながらも、Ayanokojiの縦型ボディバッグに余裕ですっぽり収まる。
過去記事:あやの小路のボディバッグはMacBook Air11インチに最適!
総評
使えば使うほど、iPadProでできることの幅広さに驚かされ、そのポテンシャルの高さに感動した。特に、文章を書いたり、絵や動画編集を手軽にするためのデバイスを欲している人には最適なのではないかと感じている。なんといっても手書きのメリットとキーボード入力のメリットを1つの端末でシームレスに享受できるというのが革命的だった。
しかも僕が買ったのは携帯回線も使える方なので、Wi-Fi関係なくネット回線につなげるという意味でも、MacBook Airに差をつけていると感じる。多少マシンパワーの必要な作業については引き続きMacBook Airを使う予定であるものの、将来的には据え置きのiMacやMac Proに置き換えることも視野に入れているのだが、それはまた別のお話。